色の見える仕組み
色の見える仕組み、もしくは色が実存する仕組みですがネット上だけでもたくさん説明があります。おすすめの説明はリンクページで紹介しています。
一言でいえば脳で作られている、のです。どう作られているのか、当方に語れる範囲で以下に説明します。
(このサイトでは、科学者の書かれたものを参考に、サイエンスに無縁な人でも親しめるように再構成しています。当方の理解の範囲なのでゆがみや偏り、過誤があるかもしれません。)
◆錐体(cone)(すいたい)
「視る」「見る」ための器官は目です。目の構造は以下のようなものです。色に関しては網膜にある錐体細胞が役割を果たします。
眼球
錐体のある場所
いきなり英語イラストですみません。日本語のだと著作権に触れなさそうなのがみつからないもので。
Retinaが網膜、coneが錐体、rodが桿体(明暗に反応する視細胞)です。
錐体(すいたい)は、目の網膜にある、光の波長に反応する視細胞です。この細胞が光を受けて、波長の長短に応じた反応をします。錐体の種類は標準で3種類です。全体の数は650万とか600万(片目)といわれています。
一方波長の方ですが、ラジオ波からγ線まで幅広いです。中で人間の目に光として感じる波長の範囲を可視光線(visible light)といい、その下限は360-400 nm(ナノメートル)、上限は760-830 nmです。
錐体には3種類あると先ほど書きました。3種類は、どういう3種類かというと、それぞれ波長420nm、534nm、564nmに感応のピークを迎える3種類の錐体です。
しかし、420、534、564といっても、人間は機械ではないので、若干のズレは人によって生じています。実際、この数値は文献によって多少ばらつきがあります。
波長564nmで最大に興奮(感受)する錐体は「長波長(Long)(L)錐体」といいます。文献によっては「赤錐体」ですが、逆に分かりづらいし、顛倒した表現なのでL錐体でいいと思います。同様に、「緑錐体」というソースもありますが、中波長錐体、通称「Middle(M)錐体」、「青錐体」ならぬS錐体です。ちなみに、数としてはL錐体が一番多いようです。
そういうことで、やや話しは飛びますが、「(第一)色盲・色弱」はL錐体が「ない」か、もしくは感受のピークが564nmとはズレている、あるいは、感度曲線の山の形が違う、などが考えられると思います。
結果としてその場合、赤い色とされるものの感受が標準的な錐体の持ち主に比べ、変わっていることになります。
いってみれば、ほとんどの男性に髪は生えているけれど、濃い人もいれば薄い人もいるようなバラツキが、網膜の三層目で発生していると、思われます。
錐体自体には色はないです。光にすらありません。光にあるのは目にとっては波長です。光の波長に対応した反応を錐体が起こし、その信号が脳に送られ、脳で色に該当する感覚が作られている、というわけです。3種の(色盲では2種の)錐体の感受のハーモニーが、瞬時瞬時に脳に伝わって瞬時瞬時に色を発生させています。
遺伝子と色覚
◆遺伝子豆知識
「遺伝子と色覚」について考える前に、遺伝子の性質について高校生物で学んだようなことをあらたに勉強しましたので、公開します。
この表の特徴は、色覚サイトならではの単語「オプシン」が入っていることです。オプシンは「色覚」のトピックにとって最重要キーワードかと思います。
ポイントは三つです。
- 遺伝子はタンパク質を作る
- 錐体は、「オプシン」という名のタンパク質である
- 減数分裂という特殊な細胞分裂がある
ということで「遺伝子豆知識」です。(主にヒトに関しての説明です)
当方、中でも「減数分裂」にとてもロマンを感じました。一個の個体なのに、個体だけで完結せず外部を最初から予見しているからです。外部のために、特殊な分裂方法をするのです。いってみれば人は最初から「半分だけのモノ」として生まれてきた、ということです。道理で不完全なはずです。得心しつつなんだか感動です。
◆オプシン遺伝子の動き(「色覚異常」の起きる仕組み)
「色覚異常」の起きる仕組みです。しかし、これは滅多に起きることではないと思います。たくさん起きていたら、「色覚異常者」の数はどんどん増えてしまいます。ただ、一度起きれば、上記の劣性遺伝の仕組みに則って引き継がれていきます。
どれくらいの頻度で起きるのかは、当方の調査が不足している(もしくはまだ科学が解明していない)ので、分かったらお知らせします。
上の表にある通り、「L錐体とM錐体の違いは、オプシンを構成するアミノ酸のごくわずかの違い」によります。つまり「遺伝子(塩基配列)のごくわずかの違いに」よります。さらに遺伝子の性質に「よく似た遺伝子は互いにくっつく」というのがあるそうです。
そのため、Lオプシンだけ、Mオプシンだけ、もしくは途中で切れた状態のLオプシンやMオプシンの遺伝子グループとして(このバリエーションは様々)、卵子の染色体に収まることがあるそうです。
その様子を、図を用いて見ていきましょう。
↑これは、ヒトのX染色体上のオプシン遺伝子の標準型モデルです。
上の人はX染色体がふたつあるので女性です。
父由来、母由来は、生まれくる赤ん坊から見れば母方の祖父母にあたります。
くどいようですがはLオプシン遺伝子で、赤を生みだすはずの遺伝子です。は同様に緑です。ポイントは、Lオプシン遺伝子とMオプシン遺伝子はきわめてよく似ているということです。そして、遺伝子の性質として似た遺伝子同志はくっつきやすいということです。
そして、この後、卵子をつくるための減数分裂が起きます。「色覚異常」が発生した場合を図解します。
↑はい、くっつきました。ちなみに、L、M遺伝子が酷似している理由は、遠い昔L遺伝子が、隣に自分のコピーを作り始め(「遺伝子重複」と言うそう)それが変化してMになったから、と考えられています。そのため、上の錐体の感度曲線グラフにもある通り、反応がほとんど重なり合っています。
くっついた後、さらに遺伝子が混ざり合います。(専門用語=交叉、もしくは遺伝子組み換え)
↑遺伝子の連なり(専門用語=連鎖)が出来上がり、最後に一本の染色体に裂かれます。
「----ふたつに裂ける----」の上の配列が卵子に収まれば、生まれてくる子はMオプシン遺伝子を余計に持ちますが、「色覚異常」にはなりません。
下の方が収まれば、Mオプシン遺伝子がないので、男児なら「第2色盲」、女児ならその「保因者」になります。
上が典型的な「第2色盲」のケースです。この他にもくっつき方と裂け方によってさまざまなケースが考えられます。たとえば
などなど…
遺伝子の小さな出来事が、人間界で必要以上にオオゴトになっている気もします。気にしないで、どんどんこの遺伝子、継承されてほしいです。