遺伝子豆豆辞典--色覚サイド

全身遺伝子だらけのイラスト無謀にも「遺伝子編」です。話しは、あなたが遺伝子について何も知らない事を前提に進めます(そうでないと、管理人の勉強の成果を発表できませんからね!)。

といっても、「遺伝子豆豆辞典---色覚サイド---」にはさほど専門的な知識は出てきません。「高校生物」くらいの一般常識範囲内に毛が生えた程度の知識です。ただ、わたし自身がそうなのですが、それさえ知らないと、次ページの本題が本気で理解不能になってしまうので、きばってまとめてみました。

あと、一般常識内に「オプシン」は出てこないと思います。オプシンは「色覚」のトピックにとって必須なので、ぜひここで覚えてください。

ポイントは三つです。

ということで、「これさえ知ってりゃ何とかなる、遺伝子豆豆辞典---色覚サイド---」です。(主にヒトに関しての説明です)

名前

存在している場所

説明

DNA 細胞の「核」の中
そのヒトの体を作る60兆個ある細胞(=体細胞)全部に同じDNAが入っている。
具体的に何をしているかと言うと、メッセンジャーRNAというお使いを出し、タンパク質を作らせる。
アミノ酸 タンパク質 *十億年も昔の原始海洋に発生したのが起源とされる。
色んな種類がある。それらが組合わさり、複雑な立体構造をなしてタンパク質になる。
タンパク質 体じゅう
全部
お肉やお魚を食べないと不足する栄養素としての一面もなくはないが、(食べないと不足するのは「必須アミノ酸」と呼ばれる)アミノ酸のほとんどは体の中で作られる。
体のありとあらゆる構成要素にして、酵素やホルモンなどの仕事人でもある。
むちゃくちゃたくさんの種類がある。
塩基 DNA *十億年も昔の原始海洋に発生したのが起源とされる。
DNAにはA、T、C、G(それぞれアデニン、チミン、シトシン、グアニンが本名)と名付けられた「塩基」がずらーーーと並んでいる。
A、T、C、Gは3つ一組でひとつのアミノ酸を作る指令となる。
したがって塩基配列がわかれば、どんなアミノ酸を作るつもりかわかるはず。
オプシン
check!
眼の網膜
タンパク質のひとつ。光を受容する。すい体がこのタンパク質で出来ている。
赤すい体と緑すい体の違いは、オプシンを構成するアミノ酸のごくわずかの違いによる。ということは、遺伝子(塩基配列)のごくわずかの違いによる。
ヒトの場合、オプシンの種類は標準装備で3種。
ヒト以外の霊長類(お猿)は2種or3種。霊長類以外の哺乳類は2種類。
哺乳類以外の脊椎動物の多くは4種類持つ。(全てではない。例;トカゲは1種)
網膜以外に脳からも発見され、関係者を驚かせている。
ロドプシン 眼の網膜 桿体はこのタンパク質。
染色体 DNA 遺伝子の入れ物。
普段は見えないが、細胞分裂する時だけ太くなるので顕微鏡でも見れる。(ひも状)
ある色素に染まって見えやすくなるのでこの名があるが、それだけの理由で付いた名称なので「解りづらい」という批判を浴びている。
父親からもらった23本で1セットと、母親からもらった23本で1セットが対をなす。つまり23組
どう対をなすのかと言うと、「ここが肝臓作る指令」「ここが足の速さ決める指令」と同じ指令同士が対応し合う。
性別を決める性染色体(1対)以外は、常染色体(22対)と呼ばれる。
1本の染色体に平均1億の塩基があるとされる。
劣性遺伝子
優性遺伝子
- 父から来た染色体上の遺伝子と、母から来たそれの同じ指令同士が対立し合った時、表に現れるのが「優性」、後ろで控えるのが「劣性」遺伝子。その他はどちらでもない遺伝子。
優性の例;わきが、はげ(男性の場合)、青い目に対して茶色い目、O型に対してA型、B型(血液型)など。
性染色体上にある遺伝子による遺伝では同じ事が、男性か女性かによって遺伝の様式が違うので、「伴性劣性遺伝」「伴性優性遺伝」と、「伴性」が付く。
「色覚異常」の遺伝子は「伴性劣性遺伝」する性質を持つ。
X染色体 DNA
常染色体
の並びの
はじっこ
性染色体のひとつ。
XXの一対で女性、XYの一対で男性となる。X染色体とY染色体はどちらも性染色体だが、X染色体は男性も女性も持つ。
赤すい体と緑すい体を作る指令はここにある。(青すい体の遺伝子は常染色体)
減数分裂 - 精子or卵子を作るための特別な細胞(=生殖細胞)がこれを行う。
精子or卵子は、受精の時に備えてもとの染色体の数を半分に減らしている。が、ただ半分に減るのではなく、父から来た染色体と母から来た染色体(生まれてくる子供から見たら祖父母の)が、しゃかしゃかと混ざり合い、くっつきあい、最終的に一本の染色体になる。
結果として、22本の常染色体と、XあるいはYの1本の性染色体の合計23本となる。

「色覚異常」の起きる仕組み、遺伝子レベル

減数分裂が起きる段階で、よく似た遺伝子である「赤オプシン」と「緑オプシン」の遺伝子は、「よく似た遺伝子は互いにくっつく性質を持つ」によって「赤オプシン」だけ、「緑オプシン」だけ、もしくは途中で切れた状態の「赤オプシン」や「緑オプシン」の遺伝子グループとして(このバリエーションは様々)、卵子の染色体に収まることがあるそうです。
その様子を、図を用いてこれから見ていきましょう。

遺伝子のモデル 遺伝子のモデル

↑これは、ヒトのX染色体上の「赤」「緑」オプシン遺伝子の標準型モデルです。
このヒトはX染色体がふたつあるので女性です。
父由来、母由来は、生まれくる赤ん坊から見れば母方の祖父母にあたります。

わたしが用いた◆は、モデルなので、実際はこういう形ではないです。ポイントは、「赤」オプシン遺伝子と「緑」オプシン遺伝子はきわめてよく似ているということです。そして、遺伝子の性質として似た遺伝子同志はくっつきやすいということです。

これから卵子をつくるための減数分裂が起きるわけですが、「色覚異常」の発生モデルを図解します。(下図)

くっいたところ

↑はい、くっつきました。ちなみに、「赤」「緑」遺伝子が酷似している理由は、遠い昔「赤」遺伝子が、隣に自分のコピーを作り始め(「遺伝子重複」と言うそう)それが変化して「緑」になったから、と考えられています。

くっついた後、さらに遺伝子が混ざり合います。(専門用語=交叉、もしくは遺伝子組み換え)

遺伝子の連なり(専門用語=連鎖)が出来上がり、最後に一本の染色体に裂かれます

↑遺伝子の連なり(専門用語=連鎖)が出来上がり、最後に一本の染色体に裂かれます。
「----ふたつに裂ける----」の上の配列が卵子に収まれば、生まれてくる子供は「緑」を余計に持ちますが、「色覚異常」にはなりません。
下の方が収まれば、「緑」がないので「第2色盲」(あるいはその保因者)になります。

上が典型的な「第2色盲」のケースです。この他にもくっつき方と裂け方によってさまざまなケースが考えられます。たとえば

第二色弱タイプ 第二色弱タイプ
第一色盲から色弱タイプ 第一色盲から色弱タイプ

などなど…

ここらへんをもっと正確に知ろうと思う方は、視物質遺伝子とその構造、などなどのキーワードで調べてみてください。

「赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子のX 染色体上での配置」や「緑オプシン遺伝子の数には個人差がある」こと、また、「染色体上では上流から赤,緑の順にオプシン遺伝子が並ぶが,上流の2つの遺伝子しか発現しない」ことが分ります。