山口さん 1999/11/26

偶然このサイトにたどりつきました。
僕は都内にある国立病院で内科をしている30歳の医師です。
中度第2異常の色覚障害を持っています。
僕はこれまでほとんど色覚障害で困ったことはありません。
唯一大学(医学部)の細菌学実習で、血液培地という赤色の背景の中に、緑色連鎖球菌という緑色の細菌を検出するというときに判定ができなかったことくらいでしょうか。
この時も教官(教授)に「赤緑色弱なので全く分かりませんがどうすればいいでしょうか」といったら、
特になにも言われず、実習免除になりました。(ラッキー)
今はその細菌学と大いに関係のある感染症内科というところで働いていますが、職業上困ることはほとんどありません。
もし色覚障害の人で、これから医師を目指している人がいたら、是非頑張ってもらいたいと思います。
医師として仕事をする上で、障害となることはほとんどありません。
昔は国立大学(特に旧帝大)で、入学制限がありましたが、
現在色覚障害を理由に入学制限している医学部は一つもありません。
もし入試で落ちることがあったら、それは色覚障害のせいではなく、勉強不足のせいでしょう。

僕は個人的にはこの色覚障害というのは「正常」に対する「異常」なのではなく、
あくまで単なる「個性」の一部だと思っています。
性格が人それぞれ違うように、顔の形が人それぞれ違うように、色の見え方も人それぞれ違うんだ、という考え方です。
ですから、ここまでは「正常」でここからが「異常」というものではなく、ちょっと変わった「個性的な」見え方をするのだと思っています。
このように楽観的に考えることができるのは僕が中度の異常でありながら、学校、家庭で差別されたことがまったく無かったということなのかもしれません。
その意味で、両親、友達、学校の先生など周りにいた方々に、感謝しています。

僕はいつでも、色に関しての何事か問題があると、(たとえばUNOというカードゲームをやっていて色がよく区別できない、など)
「僕色弱だからカードが光っていると色良く分かんないんだよね。それ何色?」
などと、そのままズバリ言ってしまいます。(初対面の人にも、です)それで困ったことは今まで一回もありません。
時折珍しがられて「じゃあこれ何色に見えるの?」などと質問されることはありますが、

「僕はそれを生まれたときから赤だと思って見ているので赤だけど、君の見ている赤とは少し違うのかもしれないね」と答えてます。

差別の問題は意外と、自分たち自身の中にその本質があるのかもしれません。つまり、「みんなと同じでなくてはいけないんだ」といった同化に対する強迫観念が、実は差別される側自身の深層心理にあるのかもしれません。
そして逆に他人からみんなと同じでない、すなわち「異常」といわれると過敏に反応して、それを強硬に否定したくなるのかもしれません。
とくに周りと同じ服を着て、同じ歌を歌って、同じ雑誌を読んでないと不安になるような、同化傾向が特段に強い日本では、その傾向があるように感じます。
みんなと違うことが「ラッキー」と考えられたり、「かっこいいじゃん」と思えたりするようになれば、精神衛生上はだいぶ楽だと思います。
少なくとも親御さんは、そのような肯定的な対応をしてあげることができれば、本人は心理的トラウマを受けることもなく、健やかに成長できるのではないでしょうか。
もちろん何か困難に直面したときには、一緒になって考え、援助してあげてほしいと思います。

最後に、このようなサイトがあるのを今回始めて発見できて、いろいろ悩んでいる人の率直な考えを聞けてとても参考となったのと同時に、医療の現場に(たまたま)いるのだから、もう少し何か自分にできることもあるのかなと思い考えることができました。


■追加でいただいたメール

現在、全国に80ある大学医学部のなかで色覚障害を理由に入学できない大学はありません。
僕が受験勉強をしていた10数年前は、まだ旧帝国大学のいくつかが入学制限をしていましたが、その後、色覚障害者のactivistの方々の働きかけによって、入学制限が取り払われたと記憶しています。
また、医学部の6年間のカリキュラムの中で、色覚障害であることによって不利益あるいはhandicapを感じることはほとんどありません。
(僕の場合、先日お話しした細菌学実習の時だけでした)また、医学部を卒業すると「医師国家試験」というものがありますが、これも色覚障害は、全く障害になりません。
次に、医者になってから、何科を目指すかということですが、基本的には「職業選択の自由」があり、すなわち、自分の行きたい科を自分で選ぶ形になっていますので、色覚障害のために、選択の制限を受けることはありません。
ということで、結局、医者に関しては、現在色覚障害が理由となって職業選択が制限されることは全くありません。(色覚障害の眼科のお医者さんもいますし。)ですから、もし医者を目指している若い人たちがいるとしたら、その人たちには、是非頑張ってもらいたいと思います。
扉はすでに開かれています。