「色覚異常」の周辺事情について調べた

色覚比較

ヒトの色覚を、他の動物と比較してみるとどうなるでしょう?
霊長類(猿、ヒト)以外の哺乳類の色覚は2色型だそうです。
霊長類の中で猿に限定すると、種類によって2色型と3色型に分かれるそう。
そしてヒトとなると、3色型が一般的なのはご存知のとおりです。

哺乳類以外の動物はどうでしょうか?
ここが本当に驚いたところで、なおかつ特筆ものなのですが、哺乳類以外の多くの脊椎動物の色覚は4色型、なんだそうです。
しかも、それを発見したのは我が日本の研究チームだそうで、快挙です(パチパチ)。
なんでもその発見は1992年と、ごく最近のよう。

それまでは海外の研究者も、「何でも一番優れているのはヒトなのだから、色覚もヒトが一番優れているはず」と思い込んでいたので、この結果には、みんなびっくりしたそうデス。

(余計な注釈:脊椎動物とは背骨をもった生き物のことで、魚や鳥や蛙もふくまれます)

蛇足ながら補足しますと、人間の2色型色覚(色盲)は猿の色盲が遺伝したのではありません。
猿の2色型色覚とヒトのそれはまったく別の経過をたどって起きた現象であり、ヒトの色盲は、あくまで通常の遺伝子配列のバリエーションとして起こったものです。
詳しくは、超ビギナー向け色覚豆知識、遺伝子編をごらんください。

歴史上に登場した「色覚異常」

「色覚異常」を「発見」したのは、イギリスの化学者、物理学者ドルトン(John Dalton 1766 1844)で、時は19世紀、産業革命のさなかでした。
ドルトン氏は、自分の見え方がどうも人と違うようだと気が付いて、色覚の研究を始めました。
ドルトン氏の死後解剖したところによると、第一色盲だったそうです。

その他、大きな登場の仕方としては、1875年にスウェーデンで起きた列車衝突事故があります。
この事故原因が、機関手の「色覚異常」(信号の誤認)によるものとされ、「色覚異常」が広く知られるようになりました。
この事はその後も引きづり、今もまだ引きづっています。

日本の歴史上では?

上記のとおり、「色覚異常」はまず欧州において知られましたが、日本での展開はきわめて特異でした。
石原忍という東京帝国大学の教授が、現在も使われている「色神検査表」を作成、発表したのです。大正時代のことです。
この検査表は、石原氏の完全オリジナルというわけではなく、すでに欧州にあった色覚検査表をより細密にしたものでした。石原氏は色盲の友人らの協力をあおぎ、もっともっと読めないものをと、どんどん改良(改悪?)していったのです。作成にあたっては、石原氏は自分で筆を取り、絵の具で丹念に彩色していきました。ただし、製本となると質の悪いインクだとすぐに読めるようになってしまうため、印刷技術がさほど発達していなかったこの頃は苦労したようです。
この読めなさ加減がすばらしかったので、海外でも評価され、ishihara-test と言えば現在でも世界的に比較的有名です。

しかしこの検査表は石原氏の予測を超えた思いもよらない事態も招いてしまいました。
この検査表は「徴兵検査のために作られた」というのが通説ですが、もっとも初期に使われたのは皇族華族の子息が通う学習院においてでした。
検査は実施され、のちに昭和天皇になる裕仁皇太子の婚約者の兄が「ひっかかった」のです。
当時一般的な知識として広まっていた「メンデルの法則」と照らし合わせると、このことは、そのまま婚姻へとすすめば皇室に「色覚異常」の遺伝が入ってしまうことを意味していました。
この件は「宮中某重大事件」の名で一般大衆の間でも非常にセンセーショナルな話題になりました。
ここらへんの経緯は昭和史の本だったら何にでも書いてありますから、興味のある方はご自分で調べて下さい。

さて、そして一般大衆で石原検査にひっかかった人がどうなったかというと、進学や就職にたいへんな制限を受けることとなりました。色盲色弱では入れない学校と、なれない職業を列挙した用紙を見たことがありますが、ほとんど全部といっていいほどでした。

ちなみに、先ほどの話は、婚約者の兄が色盲でも婚約を解消しなかった昭和天皇ということで、ひとつの美談にもなっています。

そして、昭和が終わるのとピタリと時を同じくして、かなりの進学就職制限は、法的にも解消されました。

色覚検査 諸外国では?

●アメリカ合衆国:学校における色覚検査は行っていない。(一部職業適性試験のぞく)
が、American Optometric Association (AOA)アメリカ眼科学会
は行う必要があるという見解を示す。
●フランス:5-6歳時と10-12歳時の2回に色覚検査を行うこととされている。
●イギリス:学校における色覚検査は行っている。

以上、海外の事情は不確定要素が高いのですが、とりあえず2000年時点ではそのような情報を得ていました。

●色覚検査のようなものを中心としたサイトは割と多く見受けられます。

 


参考文献:『石原忍の生涯』(現在絶版)、昭和史の本、『色覚異常者の職業上の諸問題に関する調査研究最終報告』BY NIVR 、頂いた情報、などなど

最初にアップした日 2000/01/29 修正した日 2001/02/11 , 2005/04/* , 2006.02.26
内容はそのままにレスポンシブにリメイクした日: