カラーバリアフリーとは??

色覚にはさまざまなバリエーションがあります。
カラーバリアフリーは、可能な限りあらゆる色覚条件に対応したデザイン、教材、プレゼンテーション、発想を目指すもの、です。

と、わたしなりの答えを出してみました。
わたしの子供(現在中三)も、学校の色覚検査で「色覚異常」と通達された過去を持ちますが、色覚のバリエーションは下のような模式図で表せるでしょう。

色覚分布図

二本の線で挟んだ人口密集地に住む人達が、「色覚正常」とも「標準」とも言われる人達で、人口密度はここが非常に高くなります。
そして、現在の色の科学、および産業界で使われる色構造は、ここに住む人達「だけ」の色の見え方を「心理物理学」的に調べた結果です。

まぁそうは言っても、わたしも「心理物理」の事はよく知りません。
機会があれば、超ビギナー向け色覚豆知識の中に「表色系(ColorSystem)編」というのを追加したいと常々思っているのですが、あれは非常にややこしい関数を用いていますし、わたしは大の数学嫌いなので気がすすみません。

そんなで、線の外側に住む人は「とりあえずいない」事にされているワケですが、「表色系(ColorSystem)」の大元締めと言えるCIE(国際照明委員会)が、「やっぱそれではまずいかも」と思ったのか、「錐体が受けるエネルギーをもとにした表色系も採択」しようとしているとかしていないとかいう情報も随分以前に頂いたのですが、その後どうなったのかは聞いていませんし、何のことやらわたしにはさっぱり解りませんでした。

しかし、CIEも別段悪玉ってワケではないでしょう。
何らかの色科学を作っておかないと、実際混乱のもとですし、わたしの手元にも
「赤ん坊というのは、赤子とも緑子とも言うがほんとは赤いのか緑なのか、どっちだ?」
と、茶目っ気たっぷりのメールが送られて来た事があります。
答えに窮したわたしは、「『肌色』、じゃないですか?」とユーモアのかけらもない返信をしてしまい、あとで青くなったり赤くなったりしてましたが、色は説明しようとするとどこかへ逃げていく蜃気楼のようなもんだなと思います。

きっと昔は「赤」と聞いたらそれぞれ、木になっているオレンジを「赤」だと思っている人もいたでしょうし、「トサツ場の血の色こそが赤だ」と言い張る物騒なオジサンもいたり、恋人にもらった花なら何でも「赤い花」だと思っている人とかがいたでしょう。

さほど工業化の進んでいない昔なら、それでも十分でしたでしょうが、産業革命以降はそうもいかなかったと思われます。
規格を作る必要があったのですね、きっと。現在、色覚の多様性などといって煙たがられるのは、規格外のことまで考えないといけない面倒くささなんだと思います。しかし、そこを考えてこその人の文明、そして社会ってもんだろうと。

そんな感じで、CIEが放った「色の科学」は産業の根幹であると同時に、一般社会に下って「色の常識」として深く浸透していますが、ちょっと浸透し過ぎたキライがあります。
人口密集地に住む人ばかりがヒトではないのは、東京・大阪に住むヒトばかりがヒトではないのと同じです。
CIEの作ったモノは非常に便利に使える、しかし「絶対的真実」ではない。
かように受け取りたいと思いますが、いかがでしょうか?



もう一個A.(カラー)バリアフリーとは、人口密集地に住んでいてもいなくても、自分が立っている文明の土台に対してより自覚的になること

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Q.色覚のバリエーション、それはシミュレーション出来ますか?

「色覚のバリエーション?それはどんなバリエーションなのか?」
とあなたが疑問に思うなら、たとえばColorfield Digital Media, Inc.Filter Galleryを使って、deutan, tritan, protan ※の色の見え方をシミュュレーションしてみるのも良いかもしれません(もしくはSafe coloursなど)。

これ以外にも、Web上にはけっこうたくさんの色シミュレーションプログラム、Htmlが存在していて、これらはカラーバリアフリー的意識に基づいて作られています。
ですから、一生懸命やっているところに水を差すのもどうかと思いますが、わたしはこのタイプのシミュレーションにいつも疑問を感じます。

何でかと言うと、理由の第一は、当のdeutan, tritan, protanと、情報の共有が出来ません。
第二は、単純に赤マイナス、緑マイナス、青マイナスとシミュレート可能な色覚ばかりではないです。
第三に、シミュレートする人が「基準値」であることは、あくまで幻想の範囲内でしかありません。
第四に、色の見え方は、錐体視細胞の数と種類だけの問題ではなく、おもに脳が関与しています。ですから、各人の脳における色彩処理機構は、各人の錐体視細胞の数や種類やその他の条件に特化した内容になっているはずです。パッと見の印象を変えただけでは、自分以外の人間の脳みそと同じ条件下には立てません。

これらの事は、シミュレーションを作る人達も重々承知の上なのでしょう(当のdeutan,tritan, protanが作っている可能性も多いにあります)。
それでもあえて行うのは、色の話しは言葉で説明すると複雑だし、色そのものを変化させて見せた方が手っ取り早いと思うのだと思います。
あるいは、本当の主役は、シミュレーションされる人の「目」でも、シミュレーションを行う人の「目」(それらはあまりに不安定で不確かであるため)でもなく、規格化された単位を右から左へ動していく神の代理人のようなマシンそのものなのかもしれません。

ところで、こんなシミュレーションもあります。
標準とされる色覚をもってしても読めないような、つまり「色の常識」に反した色覚検査を作りそれを読んでもらう。
その体験により、自分とは別個の心理物理法則に合わせる事がいかにつまらない事かが少しは理解出来るであろう…

これは、標準者にとってぜんぜん面白くないシミュレーションですが、この面白くなさかげんがシミュレーションになっているな、と思います。


※ deutan=deut-は第二を意味する
tritan=trit-は第三を意味する
protan=prot-は第一を意味する
色の世界では「3」という数字が大きな意味をもっていて、いつも3。
deutanは日本語の専門用語に訳すと「第二色覚異常」(緑マイナス)
protanは同じく「第一色覚異常」(赤マイナス)
tritanは同じく「第三色覚異常」(青マイナス)

もでぃふぁい2002/06/15頃
らすともでぃふぁい2017/01/08

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重要な後日談

このページを最初にアップしたのは、2001年の3月頃だったと思います。
初アップ以降、とりたてて反応のあるページではないのですが、ただ一件だけ、重要なメールを頂きました。
小学校に配布する教育ソフトの開発を行っている方が、開発過程で色覚特性の子供も視野にいれようと、きちんとしたプロジェクトを組み、さまざまな情報を検討している、その一環でこのサイトを見たのです。そして、色覚シミュレーションを否定しているかのような本文を読み、真意を確かめようと、メールして下さったのです。
これには、わたしも恐縮しました。
返信には四苦八苦しながら、このように書きました。

「そう書いた理由は、シミュレーションは、その結果を確認する人達が、すべて同じ見え方であることを前提として作られているからです。シミュレーションプログラムは正確に作動しても、それを見る人間自体は、一定不変のプログラムとは言えない…
そこらへんを指摘したつもりの文章なんです。」

随分と気負った返信ですが、どうしてもここを譲る気になれなかったのです。けれども、実際にソフトの開発、販売をする方、何より色覚特性の子供にとって、こんな「こだわり」が役に立つとは思えません。そこで、
「貴社が行うような有益な使い方としてのシミュレーションを否定する気は毛頭ないですし、それどころか、大変に感謝いたします」
と付け足しました。もちろん、これは本心です。

ちなみに、その方達はシミュレータのVISCHECKを使用しているそうです。

http://vischeck.com/runVischeck.php3
http://vischeck.com/
フォトショップ用のプラグイン

あっぷでいと2002頃


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